吾妻連峰縦走
期間   2000.9.14〜9.15
 
 bR4


1日目:浄土平〜一切経山〜家形山〜烏帽子山〜昭元山〜東大巓〜弥兵衛平小屋(泊)
2日目:藤十郎〜人形石〜凡天岩〜西吾妻山〜西大巓〜グランデコスキーセンタ  
   


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7月の北アルプス山行(黒部五郎岳〜笠ケ岳)で笠ケ岳をショートカットしてしまい、消化不良気味の思いが山へ駆り立てる。8月の焼石岳縦走(尿前〜夏油温泉)でも癒されず、山へ行きたい気持ちがますます膨らむ。候補地選びでいろいろ迷うが、吾妻連峰縦走は出発の2〜3日前でやっと計画の全部が決まる。出発は朝一番の新幹線なので前泊を余儀なくされる。(仕事の都合で休みがとれないだんなに合わせ、帰宅後山支度で再び東京へ向かい、ホテルに素泊りする。)そして2日間たっぷりと山に浸かり、下山後はスキーで馴染みのあかねペンションでくつろぐというもの。

 浄土平から一切経山への登りが始まる。背中に吾妻小富士と桶沼を従え、いつ振り返ろうかとワクワクしながら高さを増して行く。昨年は雨でこの景色が見られなかったのでこの日のお天気には感謝する。緑を寄せ付けない裸山の吾妻小富士と、樹木に覆われ噴火口に水をたたえて光っている桶沼はぽっかりと口を開け親子のように並んでいた。前を歩くだんなは振り返りもせずどんどん行ってしまうので、ひとりで何度も振り返る。
一切経登りから鎌沼方面 一切経から五色沼
家方山から五色沼 家方山から五色沼

 
登りが緩やかになると左手には酢ガ平の湿原と鎌沼が姿を現す。ゆったりと広がり、前大巓へのスロープがのびやかに続く。美しい風景だ。この辺りは春スキーを楽しむことができるエリアで、雪景色はどんなふうかとまた夢は広がる。来春はぜひ鎌沼スキーツアーを実現させたい。
一切経山の広い山頂は殺風景で『吾妻の瞳』と言われる五色沼を眺めた以外は記憶に残っていない。北に蔵王の山並み西には烏帽子山・東大巓・西吾妻山の吾妻連峰の峰々が望めると言う…風が強かったので先を急いだせいかもしれない。深いブルーの五色沼まで下り家形山へ登り返す。少し早いが頂上でランチタイムとし、蒼い瞳と向こう側になった一切経山を見ながらお弁当を食べる。一切経山の頂上から数人の人影と話声が聞こえていたが、家形山までは足を伸ばして来なかった。

 ここからは樹林の中を行くようになる。展望はないうえ、前日までの雨で道幅いっぱいに水溜りやぬかるみができ、足をどう踏み出せば良いのか悩んでしまう。ズブズブと足首近くまで潜ってしまうこともありうんざりする。結局この状態は東大巓手前の大倉新道分岐まで延々と続くことになる。唯一、烏帽子山頂でうっそうとした林が一気に開け、脚下に谷地平の広々とした湿原が望まれた以外は。
烏帽子山山頂 東大顛山頂

 東大巓頂上への道を行き過ぎて少し戻る。ガイドブックに『登山道から少し外れて見落としそうな』とあったが全くそのとおりでおかしくなる。しっかり頂上を踏んで安心すると、地図と登山計画書を入れたビニールケースがないことに気づく。「大倉新道分岐までは持っていた…よ、拾ってくるから待ってて。」とザックを降ろし、緩やかに登ってきた道を駆け下りる。登りは一歩ずつフゥフゥなのに、走るパワーがまだあるじゃん!もしかして24時間耐久レースはこんな感じなの?と思いながら、途中1回こけたりもし、分岐まで戻る。「あったぁ!」回収してすぐ引き返す。登りは緩いといっても駆け上がるわけにはいかず往復で20分の損失。だんなは「早いじゃん。」と迎えてくれたが待つ身の20分は長く感じたらしい。小屋まではあと30分、もうひとふんばりだ。弥兵衛平入り口でT字路になり、右手に延びる木道をひたすら急ぎ、ほぼ予定どおりで弥兵衛平小屋に到着する。浄土平を出発してから8時間弱を要した。

 ザックを降ろしすぐ水汲みに出かける。あたりは薄暗くなりかけているので、10分ほど下ったところにある水場へはやはり急ぎ足で行く。冷たい水で喉を潤し顔を洗うとシャキッと元気が出る。小屋は無人で2階建になっており、出入口の引き戸には内外両側いっしょに動く大きな留め金がついている。初めどんなふうに動かすのか戸惑うがわかってみるとおもしろくて2、3回まわしてみる。夕食はフリーズドライの麻婆豆腐とすき焼き風リゾット、どちらも初めてだがおいしく感じる。特に麻婆豆腐はアルファ米をおいしく食べることができるとだんなは喜んでいた。宿泊者は4・3・2・1人の4パーティのみで遅い到着でもゆったり寝ることができた。夜中に遠くの方から笑い声が聞こえて目が覚める。笑うセールスマン風の低音で響き渡る笑い声、木道を踏みしめる靴音、とぎれとぎれの話し声に、こんな時間に誰か来るのかな?と不安になるが、やがて3人組が外へ星を観に行ったらしく、戻って来る。
弥平平小屋(明月荘) 弥平平小屋付近
中吾妻 梵天岩

 2日目もお天気は良好。昨日の道を弥兵衛平入り口までゆっくり戻ると、湿原の向こうに東大巓の稜線が望め、あらためて良いところだなと思う。歩を進めると朝露に濡れた下草が登山道を塞ぎ太股から下がびっしょり濡れる。だんなはニッカーだったのでハイソックスを伝っ水が靴のなかで遊んでいる。とうとう座り込んで靴下を絞り始める。

 藤十郎からの登山道は随所に石が敷き詰められ、展望も良く昨日と比べるとできすぎなくらいだ。いろは沼、人形石、凡天岩をたどって吾妻連峰最高峰の西吾妻山へ到着する。頂上は樹木に囲まれて展望も無く拍子抜けの感じだが、とりあえず記念の写真を撮る。(シャッターを押してもらう人がまわりにいない時は、コンパクトカメラ用のおもちゃみたいな三脚がけっこう役に立つ。)こういう山は遠景で山容の美しさや大きさを楽しむものなのだろう。
西吾妻山頂 西吾妻小屋付近
西吾妻より西大巓 西大巓山頂

 西吾妻小屋に立ち寄ってから縦走最後のピーク、西大巓へと向かう。登りの途中でガスがかかり楽しみにしていた360度の展望は次回にお預けとなる。頂上は風が強く早々に下ることにし、グランデコスキー場方面へコースをとる。また樹林帯の中だ。この日は敬老の日で登って来る人も多く、挨拶を交わすと何組かがマイカー登山でこの西大巓の往復日帰りだという。樹林の中の登り3時間に頂上は雲の中というのでは残念だろう。下り始めてから1時間20分ほどで、スキーリフトの最上部へ飛び出す。明るく開けたゲレンデにホッとし、乾いた岩の上で昼食をとる。
スキー場上部で昼食 スキー場上部

 その後は、登山道の続きを見失いゲレンデの中の林道をテクテクと歩く。スキーをつけていてもセンターハウスまで滑り応えのある距離だ。あっ、この辺は初心者コースの迂回路だ、とか気を紛らわせながら行き、やっとホテルに到着する。ホテル正面の車止めではスタッフ5〜6人がなにやらリハーサルをしているが、だんなが電話の場所を尋ねると丁寧に案内してくれる。(あとで知ったのだが皇太子ご夫妻がプライベートでお見えになるということだった)ペンションに電話し、気持ちの良い芝の上でオーナーの迎えを待つ。


この縦走路は、なだらかな稜線上に原生林と湿原が広がり随所に池塘もちりばめられ、飽きのこない(足元のぬかるみは別として)、そして歩き応えのある山旅だった。もう一度見落とした風景を拾い集めに…会いに行きたいと思う。
ペンションにて


    
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